通信業界が次世代技術の展開を急ぐ中、楽天モバイルが法人市場におけるIoT(モノのインターネット)向けサービスに力を注ぐ様子が見受けられる。これは、国内大手通信事業者が提供する低料金プランの影響で、個人ユーザーをターゲットにしたMVNO(仮想移動体通信事業者)の成長が鈍化している状況下での動きだ。
NTTドコモやKDDI等の大手MNO(移動体通信事業者)の影響でMVNOが個人市場においては苦戦を強いられている一方で、IoT端末向けのニーズは右肩上がりを続けており、特に5Gの展開と合わせて、データ量が多く高速通信が求められる法人市場において、MVNO各社は契約数の増加を見込んでいる。
インターネットイニシアティブ(IIJ)の事例を見ると、法人モバイル事業において契約数は200万回線を超え、特に子供の見守り端末や監視カメラなどのIoT端末への需要が増加傾向にある。オプテージも法人契約の割合が増え、マイネオの全契約件数の約10%以上を占めるに至っている。
調査会社MM総研の予測によれば、独自サービス型SIMの市場は今後も拡大し、2025年3月末には約1710万回線に達し、その約半分がIoT回線向けになると見ている。
IIJの小野部長は、5Gの特性を活かした新サービスを提供することで、法人市場でのさらなるシェア拡大を目指すとコメントしている。一方で、楽天モバイルはMVNO市場への参入を加速させ、IoT端末向けを含む法人契約の獲得に注力している。ただし、安価な料金プランだけでは不十分で、マルチプロファイルSIMのような革新的なサービスを通じて顧客企業のニーズに応える柔軟なサービス体制の構築がこれからの競争を左右する鍵となりそうだ。